かしこいに

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本当に「戦車道は人生の大切な全ての事が詰まってる」

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この記事はガルパンについてかなりの度合いでネタバレがあります。特にリトルアーミーをまだ読んでいなくて、ネタバレを喰らいたくない方は読まないことをおすすめします。

それと4500文字ぐらいあって長いので、「まとめ」と「結論」を先に見るのも良いと思います。

 

教養とは

なんとなく考えていました。

「どんなことであっても詳しくなればその知識は『教養』に昇華する」

という意味での教養とか、

「他人とのコミュニケーションを円滑にするための知識」

という意味での教養など、「教養」という言葉には色々な意味があるらしいのです。

西住みほさんの戦車についての膨大な知識や自由な発想、麻子さんの恐ろしい程の理解力と暗記スピードを思うと、なぜだか「教養」って何なんだろうなあと思ってしまうのです。

 

大辞泉からの引用ではこう書かれています。

  1.  教え育てること。

    1. 「君の子として之 (これ) を―して呉れ給え」〈木下尚江良人の自白

    1. ㋐学問、幅広い知識、精神の修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力。また、その手段としての学問・芸術・宗教などの精神活動。

    2. ㋑社会生活を営む上で必要な文化に関する広い知識。「高い教養のある人」「教養が深い」「教養を積む」「一般教養」

 

戦車道とは

 

アニメでは戦車道そのものについてはあまり深く取り沙汰されていませんでしたが、リトルアーミーでは戦車道の核心について触れています。

西住家に務める家政婦の菊代さんは戦車道についてこう言っています。

’’戦車道’’とは戦車の技術を磨くだけのものではありません

心身を鍛え己を磨き、人としてのあり方を磨いていくものなのです

            槌居 (2013) . ガールズ&パンツァー リトルアーミー 02

 この言葉を踏まえみほさんはこういう風に考えました。

家のためじゃない、お姉ちゃんの真似でもない・・・

私がこの夏みんなと戦車をやってきて

感じて・・・

大切に思ったもの

それが多分ーーー

私の’’戦車道’’になるんだ

 

 そして戦車道について、一迅社ガルパンFebriで、ガルパンの脚本を担当する吉田玲子さんのインタビュー記事にてこう語っています。

 「道」を作るという、まさにそういう「道」なのかなと思います。

(中略)

ある意味、彼女たちの人生そのものなのかもしれない。

(中略)

自分たちの身の丈にあった戦い方を見つける。それが「戦車道」ということなんだと思いますね。

これらを踏まえて、 戦車道が持っている人生にとって大切なすべてのことの内の一つに、教養も入っていると考えられるんじゃないかなと思っていました。

戦車道に必要な能力とは

それではここまでの引用から考えてみましょう。

 

知識と実践

まずそれぞれの役割に応じた知識を獲得し、それを実戦に活かし、その知識を応用していかなければなりません。例えば、あんこうチームを例として、弾道調整ならシュトリヒの計算法を知っているだけでなく、それを速く正確に行い、かつ砲身のバラケ具合の特性にも対処できるようにする必要があります。そしてその一連の動作を実戦の状況に合わせてスムーズに行える必要があります。

どの役割でも並大抵の精神力でできることではなく、まさに精神修養の一面があるとも言えるのではないでしょうか。そしてここから得られるのは物事に対する理解力でもあるし、加えて言えば状況判断能力もあるでしょう。

 

コミュニケーション

そして「ひびき遊」さんのアニメの小説版の第一巻で武部沙織さんが蝶野亜美教官に通信手の役割について聞いたとき、こう答えていました。

「戦車の操作は1人ではまかないきれないから役割ごとに分けている。車長が頭脳、通信手が耳、砲手と装填手が手、操縦手は足を担当する。」(うろ覚えですが)

つまり、戦車は複数人で動かすことが前提で、まるで1人が思い通りに戦車を操作しているような感じで、一心同体となり一致団結して協力しなければ、戦力としてそもそもまともに動けないことを意味していると思います。

となると、実践上まともに動かせることができる程度の仲、つまりお互いの仲が少なくとも悪くはない程度以上である必要があるのです。

そしてそれを少なくとも継続していかなければ、連携が取れずに破綻していくでしょう。

つまり、お互いのコミュニケーションが必須というわけです。

 

それではコミュニケーションを行うに当たって必要な能力とは何でしょう?

それは心の豊かさ、例えば、他者への共感や同情ができたり、自身や他者の感情の機微などの把握や想像ができたり、相手の言うことを理解する力会話を上手く運んでいく為の知識や話し方などが必要でしょう。

それに戦車道などの競技では一瞬の判断が命取りとなるので、普段からコミュニケーションをとってスムーズな意思疎通ができるようにしておくことが重要でしょう。

 

礼節

 戦車道も「道」であり、当然礼節を重んじています。

蝶野亜美さんも「礼に始まり礼に終わる」と言っています。

 

試合後には互いの健闘を称え合う。特にお互いに見苦しい事を言わず、「良い試合だった」などとサラッと言うことができるのは、並大抵の精神でできることではないと思います。

勝者側は高飛車になったり、敗者側は嫉妬したりしてしまうことが多々あります。そしてそこから泥沼な展開になったりといったことはなきにしもあらず、です。

聖グロ戦、サンダース戦、アンツィオ戦、プラウダ戦、黒森峰戦、大学選抜戦などで、試合後の場面で誰かが見苦しい事を言う場面があったでしょうか。「今回だけたまたま運が悪かったから負けただけ」なんて言うキャラがいたでしょうか。確かに時の運も重要でしょうが、運を盾にして保身を行うのとは全く違います。

 

戦車道を通じて礼節を学ぶことによって、どうして礼節が必要なのか、そもそも礼節とは何かなどを考えざるを得なくなります。特に、「試合後」という礼節が最も試される重要な場面に何回も直面することになるのですから。これは他のスポーツなどにも言える話ですね。

 

私として特に印象に残っていたのはアンツィオ戦後ですね。大洗女子学園チームを招いての宴会を開いています。敗者側なのに宴会を開くなんて、懐が大きすぎます。まさにアンチョビさんはドゥーチェです。と言っても、ここまでする必要はないのでしょうが、一つの礼節の表現としては十分に良いやり方でしょう。そして大洗女子学園とアンツィオ高校の親睦が深まったことは言うまでもありません。

 

劇場版で言えば、島田愛里寿さんはボコのぬいぐるみをみほさんにあげています。これも礼節の表現の一つでしょう。そしてみほさんも

「ありがとう。大切にするね。」

と快く受け取っています。まさに大洗女子学園を廃校へと導く刺客と打ち解けあったのです。人によっては廃校へと導こうとした敵として見続けてもおかしくはなさそうですが、彼女たちは違います。

ただただ口々に「おめでとう」「良い試合だった」「ありがとう」と言うだけなのです。「廃校にならなくてよかったね」などと、直接的には廃校について言及しないのです。

ここに素晴らしき礼節が潜んでいます。廃校の危機というあまりにも大きな事件であったにも関わらず、それでもそこを一旦抑えて相手チームへの礼節を欠かさないのです。

相手チームはあくまで頼まれて戦っただけで、もともと大洗女子学園を廃校にしたいという意思はなかったというのを汲み取ってのことでしょうか。そこの辺りは想像を膨らませるか、脚本の吉田玲子さんに直接尋ねるしかありませんね。

 

 

 

道と戦車道

菊代さんの言う通り、戦車道において重要なことは戦車の技術に長けることだけではありません。つまり勝つことが全てではなく重きはむしろ

「心身を鍛え己を磨き、人としてのあり方を磨いていく」

ことに置かれているのです。

これは非常に抽象的で曖昧ですが、その分回答に自由度があるということなのです。だからこそ、それぞれの学校や個人にそれぞれのあり方からなる戦車道が存在しているのです。例えば黒森峰女学園は西住流の「何があっても前に進む」という人としてのあり方の下、「撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れなし 鉄の掟 鋼の心」を旨とする非常に厳格な戦車道でのあり方を取っています。

 

つまり、個々人がそれぞれ創造的活力を発揮し、戦車道を通じて自身の人としてのあり方を磨いていき、自身に最もなじむ人としてのあり方を発見し、その上で自身の戦車道を築き上げていく必要があるのです。つまり戦車道と個々人の道は相互作用的でもあるのです。

例えばみほさんは西住流についてずっと疑問に思っていました。犠牲を払ってでも前に進む考え方に違和感を抱き、それが例の事件で限界に達して大洗女子学園へと転校しました。そしてそこで紆余曲折を経て彼女は自身の戦車道を築き上げることが出来ました。

大洗女子学園で見たこと感じたこと思ったこと考えたこと体験したことや、夕焼け空の下友達と他愛のない話をしながら帰路についたり、お泊まり会をしたり、74アイスクリームへの寄り道とかしたり、ショッピングモールで普通に買い物したり、そういう何気ない、でも大切な思い出が彼女が戦車道を通じて作り出してきた「道」であり、それが「私の戦車道」へと繋がるのです。

その集大成が「決して誰も見捨てない」「チームの個々の個性を最大限活かして変幻自在に戦っていく」「皆で勝つ」というみほさんの戦車道なのでしょう。

みほさんの根っこからの優しさが溢れ出ている感じがします。

 

本当に「戦車道は人生の大切なすべての事が詰まってる」

「戦車道に必要な能力とは」において言及した「必要な能力」をそのまま集めてみました。

 

・基礎を積み実践かつ応用できる力

・寛大な精神

・物事に対する理解力

・状況判断能力

・心の豊さ

・相手の言うことを理解する力

・会話を上手く運んでいく為の知識や話し方

・礼節

・創造的活力

 

正直な所、これはもはや本当に「人生の大切な全ての事が詰まってる」と言ってもおかしくはないでしょう。

 

まとめ

日々戦車等の知識を重ね、実践を繰り返しそこから得る閃きから応用もする。

一つの戦車を上手く動かすためにコミュニケーションを重ね、チームの息を一心同体の域にまで昇華させ、そして更に他の戦車との連携を取れるように更にコミュニケーションの範囲と質を上げていく。

礼節を学ぶことによって、感受性を磨き精神を豊かにしていく。それは友情を育む糧にもなる。

戦車道を通じて心身を鍛え己を磨き、人としてのあり方を磨いていく。

戦車道を通じて自身が作り出してきた「道」という思い出の全てが融合して、最終的に「私の戦車道」を形作っていく。

それはまさに自身の身の丈にあった戦術となる。

 

 

ここから更に抽象化するとこうなる。

・物事の基礎と応用を実践できるように努力する

・豊かな精神性と想像力を育む

・礼節の大切さを学ぶ

・心身を鍛え、人としてのあり方を考える

アイデンティティを確立する

 

 

 結論

 

戦車道を通じて成長し、輝いている彼女たちを目の当たりにしたからこそ、アキは試合後にこのセリフを言ったのでしょう。

「戦車道は本当に人生の大切な事が詰まってるね!」

と。